日本の水道の未来を拓くために
- 祐一郎 石部
- 4 日前
- 読了時間: 5分
徳島市水道局が果たすべき役割

はじめに:暮らしを支える「水道インフラ」が今、危ない
皆さんは、水道水がいつでも蛇口から当たり前のように出てくることに、どれほどの“ありがたみ”を感じるでしょうか?
日々の料理、洗濯、風呂、飲料、医療、工業、消防――。水道は私たちの生活基盤そのものであり、インフラの中でも特に重要な“生命線”です。しかし、今、この日本の水道が静かに、しかし確実に揺らぎ始めています。
高度経済成長期に一斉整備された水道管や浄水場の老朽化
人口減少と節水意識の高まりによる水道収益の低下
現場を支える熟練技術者の高齢化と後継者不足
南海トラフ地震をはじめとする大規模災害への脆弱性
デジタル技術(DX)導入の遅れによる業務効率の限界
これらの課題は、どれも“将来の問題”ではありません。すでに始まっており、対応の遅れが命取りになる可能性すらあります。
私、石部祐一郎は、徳島市議会議員として、現場視察・政策調査・議会質問を通じて、こうした危機の本質を直視してきました。そして今、徳島市水道局が県内外の先進事例に学びながら水道インフラの再構築に挑むリーダーシップを発揮すべきときが来ています。
本記事では、現状の問題点、国の動向、先進事例、そして徳島市の現状と課題、私からの政策提言を多角的に述べてまいります。
1. 日本の水道事業が直面する“5つの構造的課題”
(1) 水道施設の老朽化
日本全国の水道管(約74万km)のうち、2022年時点で約23.6%が耐用年数(40年)を超過。
2040年代には、経年管率(老朽化管の割合)が約7割に達すると予測されており、全国的に“水道インフラの崩壊リスク”が急増しています。
特に、昭和40〜50年代に一斉敷設された都市部や中山間地の管路は、すでに限界に近づいています。
(2) 給水人口の減少と水道料金の限界
使用水量は全国的に年0.8%〜1.2%の割合で減少(節水・人口減・高齢化の三重要因)。
一方、維持費や修繕費は固定的に発生するため、水道事業の経営は年々苦しくなっています。
「2046年には、全国96%の水道事業体で水道料金を平均48%値上げしなければ維持できない」との試算(EY Japan×水の安全保障戦略機構)。
(3) 現場職員の高齢化と技術継承の危機
1980年代と比較して、水道事業に従事する職員数は約37%減少。
熟練作業員の退職により、「どこに管が埋まっているかすら不明」という地域も出現。
属人的な技術に頼ってきた構造を見直し、DXと人材育成の融合が急務。
(4) 水道インフラの災害脆弱性
南海トラフ地震では、長期間にわたる広域断水が想定されています。
東日本大震災・能登半島地震でも、配水管・宅内配管の復旧遅延により水道復旧が最も遅れたという教訓。
徳島市内でも液状化が想定される地域が多数あり、耐震化が急務です。
(5) DX(デジタル変革)の遅れ
スマートメーター、AI診断、AR技術、クラウド情報管理などは、全国的に徐々に導入が進むも、自治体ごとの温度差が大きい。
DX導入は単なる効率化ではなく、災害対応のスピードと精度を決定づけるインフラの神経系となりつつあります。
2. 広域化・DX・防災:三位一体の改革こそ未来を守る鍵
(1) 広域連携の推進:県内の水道ネットワーク強化を
香川県では「県内一水道」の先進事例があり、コスト削減・災害時の給水冗長化を実現。
徳島市が県内最大の水道事業体として、小規模自治体の支援に乗り出すべき。
統廃合に伴う住民負担や運営課題を乗り越えるには、議会の役割=制度設計・住民説明の強化が不可欠。
(2) DX化の加速:人材不足を技術で補う
技術 | 期待される効果 | 導入事例 |
スマートメーター | 自動検針、漏水検知、高齢者見守り | 富良野市など |
AI診断 | 老朽化箇所の予測と優先順位化 | 仙台市、神戸市 |
AR技術 | 技術継承の効率化 | 東京・広島などで実証 |
クラウド化 | 情報共有と災害対応の即時化 |
“目で見えない水道”にデジタルの“眼”を持たせることがDXの本質。
(3) 防災対策の抜本強化:徳島に特化した戦略を
地震対策:浄水場・送水管の耐震化率引き上げ(国目標100%)
応急体制:給水拠点の確保・水道車の整備・衛星通信網の導入
宅内配管復旧支援:災害時に他市町村からの指定工事業者が応援できるよう、供給規程の改正検討
代替水源:既存井戸・湧水・雨水利用システムの分散型導入
市民協働:各町内会と連携し、給水訓練や備蓄体制を整備
3. 私の提言
水道事業の再設計を市政最優先課題に据えるべき
県との共同で広域水道連携協議会を設置
DX推進にあたって国の補助金・技術支援を最大活用
市民向け説明会・啓発広報を段階的に実施
防災計画に基づく水道BCP(事業継続計画)整備
4. 市民の皆様へ:水道の未来を“ともに守る”ために
水道は“見えないインフラ”だからこそ、危機に気づきにくく、対策も遅れがちです。
しかし、水が止まったとき、生活は一瞬で成り立たなくなります。
「水が出るのが当たり前」という安心を、未来の子どもたちにも残したい。
そのためには、議会・行政・技術者・そして市民の皆様が一丸となることが不可欠です。
早急に仕組みづくりをしなければなりません。
皆様にはぜひ、身近な水道の状況に関心を持っていただき、声を寄せていただければ幸いです。
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